2025.04.15

4月17日は「ハローワークの日」ブラックが多い?ハローワーク求人の実態

4月17日は「ハローワークの日」
1947年に全国の公共職業安定所(現在のハローワーク)が発足したことに由来しています。

SNSではこの時期になると、

「ハローワークの求人はブラック企業が多い」
「給料が安すぎてびっくりした」
「求人広告費を出せない企業が集まる場所」

といった投稿が散見され、利用者の不信感も垣間見えます。

果たして、その印象は本当に正しいのでしょうか?

 今回は、『定着の樹』を運営する渡辺徹に、“定着の視点”から見たハローワーク求人の課題と可能性、そして企業が取り組むべき職場づくりについて伺いました。

1. 「ハローワーク=ブラック」のイメージ、どう見る?

編集部

SNSなどで“ハローワークの求人はブラックが多い”という声をよく見かけますが、この印象について、渡辺さんはどう受け止めていますか?

SNSでは「手取りが12万円台」「○○長候補の月給が低い」「年間休日が100日以下」といった投稿が拡散されがちです。

渡辺も「そう思われても無理はない」と前置きした上で、こう語ります。

渡辺

ハローワークは日本でもっとも求人件数が多い媒体です。
件数が多ければ、それだけ“悪目立ちする”求人も出てくるのは当然。
だからといって、すべてがブラックかというと、決してそうではないと思います。

2. 実は、掲載基準は“いちばん厳しい”

編集部

ハローワークの求人掲載について、“チェック体制が甘いのでは?”という印象もあるようです。実際の審査基準や制度面で感じていることがあれば教えてください

渡辺

意外に思われるかもしれませんが、求人広告よりもハローワークのほうが掲載基準は厳しいんです。

ハローワークは“無料で出せる”というイメージが先行しがちですが、実は求人の内容に対する審査はかなり細かく行われています。

たとえば、残業代の支払い方法や記載方法、最低賃金の算出根拠、手当の計算式など、求人票の内容に関しては詳細なガイドラインが定められています。

渡辺

求人広告の方がずっと自由だった時代もありました。今でこそ少しずつ基準が統一されてきていますが、元々はハローワークの方が断然厳しかったんです。

ただし注意すべきは、ハローワークの審査があくまで「求人票の表記内容」に対するものであるということ。

実際にその条件が職場で守られているか、従業員がその通りに働けているかどうかまでは、チェックの範囲外です。

渡辺

求人票のチェックはしても、その会社の実体まではどこも見に行けないんですよね…

つまり、求人票に“しっかり書いてあるから安心”とは限らない。

制度としての信頼性と、職場としての実態には、まだギャップが残っているのが現実です。

3. 問題は、求人票ではなく“中身の古さ”?

編集部

求人票の条件が今の時代の求職者に合っていないケースもあるように思います。企業側の“アップデート不足”について、渡辺さんはどうお考えですか?

渡辺

アップデートされていない企業が、そのまま昔の方法で求人を出しているのが見受けられます。悪気なく“取り残されている”ケースも多いですね。

企業側が「給料はこのくらいでいいだろう」「休みは少なくても問題ない」と思い込み、時代の変化に気づかないまま求人を出し続けている──。

渡辺は、そんな“悪気のない遅れ”が問題の根底にあると指摘します。

渡辺

中には、会社にパソコンが一台もない、スマホが1台しかないという企業も実際に存在します。
こうした環境では、求人票をどれだけ整えても、求職者に魅力は伝わりません。

4. 信頼される求人づくりは「まず“足元”を見直すこと」から

編集部

求職者に“信頼できる会社”だと感じてもらうために、企業はまずどんな点から見直すべきでしょうか?

渡辺

魅力を伝える前に、“足元の条件”が本当に機能しているか、一度立ち止まって見直してみること。それが、求職者に信頼される求人への第一歩です。

求人づくりの施策には、大きく分けて「土台を整えるための施策」と、「魅力を付加するための施策」があります。

たとえば、給与や年間休日の水準が極端に相場とずれていたり、制度としてはあっても「実際に使われていない」「取得しづらい空気がある」といった状況では、いくら“働きがい”や“研修制度”をアピールしても、求職者には響きにくいものです。

渡辺

条件や制度が“あるかどうか”だけでなく、ちゃんと運用されていて従業員が使えているかまでを含めて見直してみましょう。
それが信頼される求人を作るための第一ステップだと思います。

求人票にどんな言葉を載せるか──その前に、実際の職場の状態がどうか。

「整っているつもり」から、「伝えられる状態」へ。そんな意識の転換が求められています。

5. 求人票を出す前に、整えるべきは会社の“内装”

編集部

求人を出す前に、社内制度や働きやすさなど、いわば“会社の内側”を整えるべきでは?と思うのですが、渡辺さんはどう考えますか?

渡辺

採用は外装、定着は内装。キレイな見た目だけで人は定着しません。

渡辺は採用と定着を“家”にたとえます。

採用は“外観”であり、定着は“内装”とのこと。

渡辺

いくら広告でキラキラの外装を見せても、実際に働く中身=内装が整っていなければ、社員は定着しません。
見た目だけよくしても、実際に住む=働く環境が整っていないと意味がないんです。

具体的には、以下のような「定着の5要素」を見直すことが重要だといいます。

①条件の見直し
②仕事自体の見直し
③社員へのアプローチ(個人)
④社員へのアプローチ(管理職)
⑤組織コミュニケーションの活性

関連記事:定着の樹 〜”定着”を構成する5分野〜(2023.05.23)

6. 『定着の樹』が“職場づくり”を大切にする理由

編集部

求人支援ではなく“職場づくり”に重きを置いている『定着の樹』の考え方について、その背景や立ち上げの思いを改めて伺えますか?

渡辺

就職支援は“外装の整備”。でも定着支援は“内装の見直し”。
ここをサポートする場が必要だと思ったんです。

渡辺が『定着の樹』を立ち上げた背景には、支援者としての実感があります。

渡辺

求職者が面接に受かるようにトレーニングすることは、ある意味“表面的”な部分のサポートです。でも、本当に大事なのは“入社してから活躍できるか”
そのための仕組みや環境整備に着目した情報が少なかったので、まとめようと思ったのが『定着の樹』の原点です。

7. ハローワーク求人は、使い方次第で“お宝求人”になる

編集部

最後に、4月17日の“ハローワークの日”にあわせて、企業の皆さんに伝えたいことがあればお願いします。

渡辺

無料で出せるからこそ、戦略的に使う意識を。
埋もれた良い会社も、ハローワークにはたくさんありますよ。

「ハローワーク求人=悪いもの」という見方が広がる一方で、実際には「条件は悪くないのに応募が来ない」「魅力が伝わっていないだけ」という“埋もれた優良求人”も少なくありません。

渡辺

ハローワークだけに頼るのではなく、求人票+自社ホームページやSNSなど“伝える努力”を惜しまないこと。そうすれば、求職者との信頼関係も築けるはずです。


おわりに:求人は“職場の写し鏡”

求人票は、企業の内側を映す“鏡”のようなもの。

条件の整備、働きやすさ、会社の雰囲気──そのすべてが求職者に伝わっていく時代です。

4月17日「ハローワークの日」をきっかけに、
求人の“出し方”だけでなく、“中身”からも見直してみませんか?


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