2023.06.27

マズロー理論から見る雰囲気が悪い職場の特徴と改善方法

「最近、従業員の表情が冴えない」「離職が続いていて気がかりだ」。

そんな変化を感じているとしたら、その背景には“職場の雰囲気”が影響している可能性があります。

目に見えるものではないものの、雰囲気は確かに職場に存在します。

空気感がわずかに沈んでいるだけでも、従業員のパフォーマンスやチーム全体の健全性に少しずつ影響を及ぼします。

雰囲気が悪化すると、信頼関係が崩れ、コミュニケーションが減り、生産性の低下や離職につながることも珍しくありません。

本記事では、雰囲気の悪い職場に共通してみられるサインや原因を整理しながら、心理学「マズローの欲求5段階説」を軸にした改善のヒントを解説します。

職場のモチベーション向上や組織づくりを見直す際の一助となれば幸いです。

1. 職場の雰囲気が悪化している時に見える5つのサイン

当てはまる項目があれば、組織の空気が重くなっている可能性があります。

● 空気が重い

照明が暗い、備品が古いまま放置されている、整理整頓が行き届いていないなど、職場環境の乱れは、知らないうちに従業員の気持ちに影響を与えます。

「なんとなく居心地が悪い」と感じる空間では、集中力や生産性も低下しやすくなります。

● 悪口・批判が多い

陰口や一方的な批判が日常的に聞こえてくる職場では、従業員同士の信頼関係が損なわれます。

安心して意見を出し合えなくなり、前向きな提案や協力体制が生まれにくくなります。

● 会話が極端に少ない

業務連絡以外の会話がほとんどなく、雑談も交わされない職場は注意が必要です。

相互理解が不足した状態では、小さな違和感や課題が共有されにくく、結果としてアイデア不足や問題解決の遅れにつながります。

● 風通しが悪い

意見を伝えても受け止めてもらえない、提案が反映されない状況が続くと、従業員は次第に発言を控えるようになります。

「どうせ言っても変わらない」という諦めが、モチベーション低下や離職のきっかけになることもあります。

● 上司・同僚の態度が常に暗い

不機嫌な態度や無表情、冷たい対応が常態化していると、周囲は声をかけづらくなります。

その結果、相談や連携が減り、チームとしての協力関係が築きにくい雰囲気を生んでしまいます。

2. 職場の雰囲気が悪化する主な原因

職場の空気が悪くなる背景には、いくつかの根本的な要因が潜んでいます。

特に影響が大きいと考えられるのは以下4つの原因です。

● 失敗を許さない文化

失敗を厳しく責める風土があると、従業員は次第に挑戦を避けるようになります。

「何か言えば叱られる」「失敗すれば評価が下がる」と感じる環境では、主体性が失われ、職場全体の活気も生まれにくくなります。

● 労働環境の悪化

長時間労働や慢性的な人手不足が続くと、従業員は心身ともに疲弊しがちです。

余裕を失った状態では、周囲への配慮や気遣いも難しくなり、職場の雰囲気が尖っていくことがあります。

● 評価制度の不透明さ

努力や成果が正当に評価されない職場では、モチベーションの低下を招きやすくなります。

「上司のお気に入りが優遇される」「成果より年功序列が重視される」といった不公平感は、組織全体に不信感を広げかねません。

● コミュニケーション不足

一方的な指示が中心で、従業員の声を聞く機会が少ない職場では、孤立感が生まれやすくなります。

その結果、意見が出にくくなり、課題の発見や解決が遅れるなど、雰囲気悪化の連鎖につながっていくことも…。

3. 「マズローの欲求5段階説」で読み解く職場改善

職場の雰囲気が悪くなったとき、「コミュニケーションを増やそう」「声かけを意識しよう」といった対策が取られることは少なくありません。

もちろんそれも一つの方法ですが、うまくいかないケースも多いのが実情です。

背景には、従業員それぞれが抱えている“満たされていない欲求”の違いがあるかもしれません。

疲労が限界に近い場合と、評価への不満が大きい場合とでは、有効なアプローチが異なるのは自然なことです。

そこで役立つのが、心理学者マズローが提唱した「欲求5段階説」

感情や不満を個人の問題として捉えるのではなく、「どの段階の欲求が滞っているのか」という視点で整理できる点が、現場改善に向いています。

疲労が限界に近い場合と、評価への不満が大きい場合とでは、有効なアプローチが異なるのは自然なことです。

3-1. マズローの欲求5段階説とは

画像引用元:マズローの欲求5段階説の意味とは_Direct Communication

マズローの欲求5段階説は、心理学者アブラハム・H・マズローが提唱した、人間の動機づけに関する理論です。

人は生まれながらに複数の欲求を持っており、それらは無秩序に現れるのではなく、一定の段階を経て顕在化すると考えられています。

この理論では、人間の欲求を次の5段階に分類しています。

  • 生理的欲求
    生命を維持するための最も基本的な欲求。食事、睡眠、休息などが含まれます。

  • 安全欲求
    身体的・精神的に危険から守られ、安定した状態で暮らしたいという欲求。安全な環境や将来への不安が少ない状態を求める欲求です。

  • 所属欲求(社会的欲求)
    集団に属したい、他者とつながりを持ちたいという欲求。友情や愛情、仲間意識などが該当します。

  • 自尊欲求
    他者から認められたい、自分自身を価値ある存在だと感じたいという欲求。評価や尊敬、達成感などが含まれます。

  • 自己実現欲求
    自分の能力や可能性を最大限に発揮し、理想の自己に近づきたいという欲求。創造性の発揮や自己成長への欲求がここに位置づけられます。

参考:マズローの欲求5段階説の意味とは, わかりやすく解説_Direct Communication

マズローは、これらの欲求は低次の欲求がある程度満たされてから、次の段階の欲求が現れやすくなると考えました。

つまり、生理的・安全の欲求が十分に満たされていない状態では、所属や自己実現といった高次の欲求は生じにくい、ということです。

なお、欲求は必ずしも厳密に一方向へ進むものではなく、状況や個人差によって前後することもあるとされています。

それでもこの理論は、人の行動や感情を構造的に理解するための枠組みとして、現在も幅広く用いられています。

3-2. マズローの欲求5段階説を、職場の課題整理にどう活かすか

マズローの欲求5段階説は、職場の課題にそのまま当てはめれば答えが出るような、処方箋型の理論ではありません。

一方で、人がどのような状態に置かれると、どのような不満や行動が生じやすいのかを整理する視点としては、職場改善を考える際にも参考になります。

職場の雰囲気が悪い、モチベーションが上がらないと感じたとき、
「やる気が足りない」「コミュニケーションが不足している」といった表層的な現象だけを見てしまうと、対策が場当たり的になりがちです。

そこで、従業員が置かれている状況を、欲求の段階という切り口で整理してみることで、
今どこに無理や滞りが生じているのかを冷静に見直しやすくなります。

以下は、あくまで一例ですが、欲求段階ごとに職場で起こりやすい状況と、改善を検討する際の視点を整理したものです。

① 生理的欲求に関係する視点

休息が十分に取れず、業務量が常に逼迫している状態では、心身の回復が追いつかず、前向きに業務へ向き合うことが難しくなります。

  • 休憩時間が形骸化していないか
  • 業務量や担当の偏りが常態化していないか
  • 忙しさを理由に基本的なケアが後回しになっていないか

この段階では、制度や意識改革に踏み込む前に、働き方そのものを見直す余地がないかを確認することが出発点となります。

② 安全欲求に関係する視点

働く場としての基盤が整っていない状況では、腰を据えて業務に向き合うことが難しくなります。

・業務中に怪我や事故が発生するリスクはないか。
・長時間労働や過度な負担によって、体調を崩しやすい状態になっていないか。
・また、雇用や収入面について、先行きの不透明さを感じさせる要素が残っていないか。

こうした前提条件が不安定なままでは、職場全体の空気にも落ち着きのなさが表れやすくなります。

③ 所属欲求に関係する視点

業務上のやり取りだけで関係性が完結している職場では、孤立感を覚える従業員が出てくることがあります。

  • 業務以外の会話が極端に少なくなっていないか
  • チームとしての一体感を感じられる機会があるか
  • 新しく加わった人が馴染みにくい空気になっていないか

互いの存在を認識し合える関係性があるかどうかは、日々の空気感に影響します。

④ 自尊欲求に関係する視点

努力や成果が十分に伝わらず、評価の理由が見えにくい状況では、不公平感や諦めが生まれやすくなります。

  • 評価の基準や背景が共有されているか
  • 成果だけでなくプロセスにも目が向けられているか
  • 日常的なフィードバックが不足していないか

評価制度だけでなく、日々の関わり方も含めて見直す視点が求められます。

⑤ 自己実現欲求に関係する視点

業務が固定化し、成長や挑戦の実感を得にくい状態が続くと、仕事への意味づけが弱まることがあります。

  • 新しい役割や業務に挑戦できる余地があるか
  • 今の仕事が将来につながると感じられているか
  • 学びや成長の機会が閉じていないか

仕事を通じて自分の可能性を広げられる感覚は、長期的なモチベーションや定着にも関わります。

このように、欲求5段階説を「当てはめの正解探し」に使うのではなく、
職場で起きている違和感や不満を整理するための視点として用いることで、改善の方向性を考えやすくなるでしょう。

理論はあくまで補助線です。

現場の状況や組織のフェーズを踏まえながら、何から整えるべきかを検討するための材料として活用していくことが重要だと言えるでしょう。

4. まとめ

職場の雰囲気は、目に見えにくいものですが、従業員の行動や意欲、そして定着に大きく影響します。
雰囲気の悪化は、個人の問題として突然現れるものではなく、日々の環境や関係性の積み重ねによって少しずつ形づくられていきます。

本記事では、職場の空気が悪くなっているときに見えやすいサインと、その背景にある構造的な要因を整理してきました。

① 雰囲気が悪化している職場に見られる5つのサイン

職場の雰囲気が悪くなり始めると、次のような兆しが現れやすくなります。

・空気が重く、職場にいるだけで緊張感や居心地の悪さを感じる
・陰口や一方的な批判が増え、安心して発言しづらい雰囲気が広がっている
・業務連絡以外の会話がほとんどなく、人と人との関係性が希薄になっている
・意見や提案が通りにくく、「言っても無駄だ」という空気が漂っている
・上司や同僚の不機嫌な態度が、職場全体の空気を暗くしている


これらは単独で起こるというより、複数が重なり合いながら職場の雰囲気を形づくっていくことが多い点に注意が必要です。

② 雰囲気悪化の背景にある主な要因

こうしたサインの背景には、個人の資質だけではなく、職場環境や組織のあり方が大きく影響しています。

・失敗を許容せず、挑戦よりも萎縮を生みやすい文化が根づいている
・長時間労働や人手不足により、従業員が常に余裕を失っている
・評価の基準や理由が見えにくく、不公平感が生まれている
・一方的な指示が中心で、双方向のコミュニケーションが不足している

これらの要因が積み重なることで、職場の空気は徐々に硬直していきます。

③ マズローの欲求5段階説から得られる整理の視点

マズローの欲求5段階説は、職場改善の正解を示す理論ではありませんが、
人が置かれている状況や感じている不満を整理するための視点として活用することができます。

・今、従業員がどの段階でつまずいているのか
・どの土台が十分に整っていない状態なのか
・何を優先して見直すべきか


こうした点を冷静に考えるための「整理軸」として、この理論は役立ちます。

重要なのは、表面的な対策に終始するのではなく、従業員が置かれている状況や感じている違和感を、構造的に捉え直すことです。

理論をそのまま当てはめるのではなく、自社の現場を見つめ直すための判断軸として活かす。

その積み重ねが、従業員が安心して働き続けられる職場づくり、ひいては定着につながっていくのではないでしょうか。

参考:

【雰囲気の悪い職場 変える方法】雰囲気の悪い職場を「気持ちのいい職場」に変える – Bing video
マズローの欲求5段階説を社員満足経営に活かす | 市川社会保険労務士事務所 (sr-consultant.net)
マズローの5段階欲求説から自分が仕事をする意味を考えてみた | Coaching Workshop.com (coaching-workshop.com)


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