2025.04.22

給与水準の適正ラインとは?“ある視点”で見直せる判断のヒント

「この給料で納得してもらえるだろうか?」
「給与が理由で辞められてしまった…」

給与の悩みは、企業の人事担当者や経営層にとって、常に頭を悩ませるテーマのひとつです。

特に今の時代、採用難・物価上昇・働き方の多様化といった変化のなかで、”給与水準”の見直しは避けて通れません。

この記事では、給与の「トップ(上限)」と「ボトム(下限)」に焦点をあてながら、

  • 市場価値に合った給与の見直し方
  • 地域別の生活費を踏まえた下限の考え方
  • 優秀人材に響く“給与+α”の工夫

について、わかりやすく解説していきます。

1. 市場価値から読み解く「給与水準」の見直し方

給与水準とは、企業が社員に支払う給与の金額の幅のことです。最も高い水準が「トップ」、最低限の支給額を「ボトム」と呼びます。

この「トップとボトム」の差が大きすぎても、小さすぎても、組織には歪みが生じます。適正なバランスをとることが、社員のモチベーションや企業の成長に直結します。

社員の市場価値を評価する際には、以下の4つの軸を意識することが重要です:

要素見るべきポイント
スキル専門性、資格、業界知識
経験年数+経験の質
役割担当業務の責任範囲
成果実績、貢献度

また、**厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査」**では、年齢・学歴・職種・役職など、さまざまな属性ごとの平均給与が公開されています。

このデータを活用することで、自社の給与水準が市場の中でどの位置にあるかを客観的に確認できます。

2. 地域の生活実態をもとにした下限設定の考え方

ボトムの給与を考えるとき、まず押さえておきたいのが「地域による生活費の違い」です。

以下は、各地域での一人暮らしを想定した月々の生活費の目安です。

なお、これらの支出平均額は、住宅手当を受けている人や家賃を支払っていない世帯(例:親族所有物件、持ち家など)も含まれていると考えられます。
また、地価や物価の変動、地域などによって、実際の生活費には幅があるため、各地域の生活実態や家賃相場とあわせて適切に把握しておきましょう。

(※すべてLIFULL HOME’Sによる単身世帯の年間支出・住居費の平均値を月額換算したものです。住居費は「年間住居費÷12」、その他生活費は「年間支出合計-年間住居費」を12で割り、四捨五入した概算値です。)

地域家賃(月)その他生活費(月)合計目安
東京都渋谷区約6.2万円約29.7万円約35.9万円
仙台市青葉区約2.1万円約13.3万円約15.4万円
秋田県横手市約1.1万円約10.1万円約11.2万円

出典:以下の情報を参考に、2025年4月18日時点でLIFULL HOME’S 住まいインデックスより算出

ただし、地方では車が必須の地域も多く、ガソリン代や保険料といったコストも見逃せません。

給与のボトムを考える際には、地域事情に合わせた「家賃補助」「交通手当」なども重要な視点です。

3. “給与+α”で人材が集まる企業がやっていること

しかしながら求職者は、必ずしも「給与の額面」だけで入社を決めているわけではありません。

以下のような”給与以外の魅力”を具体的に伝えることが、採用・定着の差別化に繋がります:

  • 研修やキャリアアップの機会
  • リモートワークや柔軟な勤務形態
  • 家族手当や住宅補助などの福利厚生
  • 社員の声が反映される制度設計

こうした情報を数値や具体的事例を交えて発信することで、企業の信頼性と共感度を高めることができます。

4. トップとボトムのバランス調整で信頼を築く

給与の見直しは、「金額の上下」だけでなく「全体のバランス調整」がポイントです。

例えば、トップ層の給与が高すぎると、他の社員との不公平感が生まれやすくなります。

一方で、適切な成果を上げている社員に正しく報いる制度がなければ、離職リスクが高まります。

給与に関わる判断では以下のような点にも注意が必要です:

  • 成果への過剰なプレッシャーを避ける
  • 社内全体の給与バランスを考慮する(役職・年次・貢献度など)
  • 社会保険料や福利厚生費を含めた総コストで設計する

給与体系や評価基準の透明性を高め、定期的に市場や社内状況に応じて見直すことで、社員の納得感と会社への信頼を高めることができます。

まとめ

給与水準の見直しは、単なるコスト管理ではなく、企業の信頼づくりと持続的成長の基盤です。

  • 市場価値に見合った評価を行い、成果・役割・スキルを正当に反映させること。
  • 地域ごとの生活費を踏まえた下限の設定で、安心して働ける環境を整えること。
  • 給与に加えて、制度・文化・働きやすさといった“+α”の魅力を明確にすること。
  • トップとボトムのバランスに配慮し、不公平感を生まない透明な設計にすること。

これらを定期的に見直し、データと現場の声の両方を取り入れることが、社員の納得感と定着率を高めるカギとなります。

企業にとって給与とは「人を引き寄せ、つなぎとめ、育てる」ための重要な戦略です。

今こそ、“ある視点”をもって、給与水準を再設計してみてはいかがでしょうか?


出典・参考情報


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