地方の小さな企業にとって、「人材の確保」や「離職率の低下」は、長年の課題といっても過言ではありません。
応募者が少ない、若手がすぐ辞めてしまう──
そんな悩みを抱える中小企業の声を、私たちはこれまでに数多く耳にしてきました。
一方で、少しずつ変化がみられるようにも感じます。
そのひとつが「若者の地元志向の高まり」です。
かつては「一度は都会へ出て、経験を積んでから戻ってくる」「そもそも地元に魅力的な仕事が少ない」といった理由で、若者たちが地域を離れるのが当たり前のようになっていました。
しかし近年、高校生や専門学生との対話の中で「地元に残りたい」「家族や地域とのつながりを大切にしたい」という声が多く聞こえてきます。
特にコロナ禍以降、生活や働き方に対する価値観が変化し、都会の利便性よりも、地域の安心感や人との関係性を重視する若者が増えてきたように思います。
これは、地方の企業にとって、ひとつの大きなチャンスとも言えるでしょう。
「知ってもらう」ことから始まるつながり
では、どうすればそのチャンスをつかむことができるのでしょうか？
鍵になるのは、「地域とのつながりを育てること」です。
たとえば、地域の高校や専門学校と連携して職場見学やインターンシップを受け入れること。
地域のイベントやお祭りに協賛・参加すること。
地域住民向けに会社説明会や工場見学会を開催することも、立派なアプローチのひとつです。
こうした活動を通じて、まずは「地元にこんな会社があるんだ」という認知を広げることが第一歩。
「地元で働きたいけど、どんな会社があるか分からない」という若者は意外と多く、企業側から積極的に情報を届ける姿勢が求められています。
また、学校や保護者、行政などとつながることも、間接的に採用や定着に結びついていきます。
「この会社なら安心して任せられる」
「地元の企業で、地域に貢献している」
そんな印象が周囲の大人たちに広がることで、若者が背中を押されることもあるのです。
「地域の中で働く」ことの意味を伝える
中〜小規模企業の魅力は、「人の顔が見える職場」であること。
仕事が暮らしのすぐそばにあり、通勤時間も短く、困った時には誰かが手を差し伸べてくれる環境があります。
都会の大規模企業にはない、あたたかさや安心感。
それを実感してもらうには、「言葉」よりも「体験」がいちばんです。
職場体験やインターンを通じて、「ここでなら、自分らしく働けるかもしれない」と感じた学生が、入社後も長く働き続けている例は少なくありません。
また、地元の人たちとの関係性も、若者の「働きがい」や「誇り」に繋がります。
「自分の仕事が、地域の役に立っている」
「おじいちゃんが“あの会社に勤めてるのか”と喜んでくれた」
そんな日々の何気ない出来事が、社員のモチベーションを育ててくれるのです。
小さな会社だからこそできること
もちろん、企業規模が小さいことで不利に感じる場面もあるかもしれません。
大手のような知名度や給与水準では勝てない──そう思う方もいるでしょう。
けれど、そのような会社だからこそ、地域との距離が近く、フットワーク軽く取り組めることもあります。
たとえば、地元高校とのつながりをきっかけにその年の新卒者が全員地元採用になった例や、会社説明会に参加した学生の家族が「うちの子に合っているかも」と後押ししてくれたケースもあります。
そうした“ご縁”は、広告費をかけなくても、日々の信頼の積み重ねから生まれるものです。
「人と地域に選ばれる会社」へ
これからの時代、ただ「求人票を出して待つ」だけではなかなか人は集まりません。
それよりも、地域に根ざし地域と共に歩む企業の意識と姿勢こそが、「働く環境の魅力」として伝わってくのではないかと考えます。
若者たちは、会社の規模や知名度だけでなく、
「どんな人がいるのか」
「どんな思いで仕事をしているのか」
「自分がそこでどう生きられるか」を見て判断しています。
その意味でも、地域とつながることで企業の“顔”がより伝わりやすくなるのです。
地域と共に成長し、地域に必要とされ、地域の未来を担う若者たちに選ばれる──
そんな会社が増えていけば、地方の雇用はもっと元気になっていくはずです。
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