
4月は人事異動や新年度の体制変更が重なる時期です。
同時に、子どもの慣らし保育期間を経て育休を終えた社員が職場へ復帰するタイミングでもあります。
育児休業制度は多くの企業で整備され、「育休からの復帰」は制度上は一般的なものになりました。
しかし現場では、子どもの体調不良や学級閉鎖などの事情により早退・休みなど勤怠が揺らぎやすく、その積み重ねが職場の負担感や本人の居づらさにつながるケースもあります。
ここで押さえておきたいのは、育休復帰後の勤怠変動は個人の努力不足によるものではないという点です。
また、制度が整っているかどうかだけで解決する問題でもありません。
多くの場合、課題は「日々の業務をどう設計しているか」という運用面にあります。
本記事では、4月に育休から復帰する社員が安心して働き続けられる環境を整えるために、企業として見直すべき三つの視点――
①子ども事情を前提とした働き方・制度の再設計
②残業や急対応を前提にしない業務構造への転換
③部署内の不公平感を生まないマネジメント
――を提案しています。
復帰者本人への配慮にとどまらず、部署全体が持続的に業務を回せる体制をどう構築するか。
そのヒントとしてご覧ください。
目次
1. 復帰後に芽生える罪悪感
定着の樹 編集部が、育休を経て復帰した方々にヒアリングを行ったところ、次のような声が聞かれました。
「度々休んでしまい、『申し訳ありません』が口ぐせになっていた」
「迷惑をかけている気がする」
「また早退ですか、と言われないか不安だった」
本人は職場に戻りたい、戦力として貢献したいと考えています。
しかし、子どもの体調不良や園・学校事情による急な欠勤や早退が続くことで、徐々に居づらさを感じてしまうことがあります。
ここで重要なのは、こうした状況を「個人の問題」として扱わないことです。
育休から復帰した社員が安心して働けるかどうかは、組織がどこまで具体的に設計しているかに左右されます。
2. 子ども事情を前提に制度設計しよう
企業が育休復帰後の働き方を考えるうえで、まず前提に置きたいのは「外的要因は想定内」という認識です。
・感染症流行による急な学級閉鎖
・本人は元気でも登園・登校停止
(国が定める感染症対策のガイドラインや園の安全配慮方針により登園できないケースがあるため)
・地域事情(天候悪化・事件発生・クマ出没など)による送迎推奨
・保育園/学校からの急な呼び出し
(発熱やけがなどで保護者の即時対応が求められるため)
これらは例外的な出来事ではなく、今後も一定の頻度で起こり得る現実です。
それにもかかわらず、多くの企業では
「出勤していない=欠勤・有給」
という二択で処理されがちです。
この構造が、育休から復帰した社員に強い心理的負担を与えます。
検討したいのは、「自宅で可能な業務の切り出し」です。
・電話対応
・書類チェック
・資料作成
・社内連絡業務
・データ整理
業務内容によっては、完全出社でなくても一定の業務遂行が可能な場合があります。
その場合、稼働分を時間単位で評価するなど、柔軟な運用をあらかじめ定めておくことが有効です。
重要なのは、社員側に判断を委ねるのではなく、企業側が「この条件なら業務として扱いますよ」と明確に定義しておくことです。
3. 残業前提を見直す
育休から復帰した社員が抱えやすいもう一つの負担が、「残業や急対応に十分協力できないことへの申し訳なさ」です。
お迎え時間が決まっている
夜間対応が難しい
急な残業要請に応えられない
これらは育児中の社員にとって現実的な制約です。
しかし、本質的な課題はそこにあるのではありません。
問題は、残業や当日対応を前提とした業務構造そのものにあります。
この構造は、育休から復帰した社員だけでなく、他の社員にとっても長期的な負担となり得ます。
特定の事情がある社員がいるかどうかにかかわらず、「急対応が常態化している組織」は、疲弊を生みやすい環境です。
社外と納期基準を共有する
育休復帰後も業務が安定して回る企業では、業務量や納期を含めた構造の整理が行われています。
具体的には、次の点が挙げられます。
・属人業務の棚卸し
・緊急対応の代替ルート設計
・業務量と納期設定の見直し
・業務の優先順位の明確化
特定の人しか分からない業務が残っている状態では、誰かが抜けるたびに負担は集中します。
また、受注時点で無理のある納期を設定していれば、残業や急対応は構造的に発生します。
そこで必要になるのが、社内だけでなく社外との合意形成です。
例えば、
「当日・近日対応が可能なご依頼の受付は〇時まで」
「品質向上および働き方改革の観点から、標準納期は〇営業日」
といった基準をあらかじめ明示し、顧客や関係会社とコンセンサスを取ることも一つの方法です。
もちろん、短期的には勇気のいる判断かもしれません。
しかし、無理な受注や曖昧な対応時間を前提にした体制では、誰かの私生活や健康に過度な負担がかかる構造が温存されてしまいます。
「復帰者がどう調整するか」ではなく、
「組織が調整可能な構造にする」。
育休復帰をきっかけに業務設計を見直すことは、特定の社員のためだけではなく、部署全体の持続可能性を高める取り組みでもあります。
4. 不公平感を放置しない
育休復帰が難航する背景には、部署内の二方向の感情があります。
・復帰者の罪悪感
・周囲の社員の不公平感
後者を放置すると、現場の納得感が失われます。
対応策として有効なのは、
・フォロー担当を固定しない
・業務を可視化する
・上長が主体的に業務配分を行う
・フォロー業務を評価対象に含める
育休復帰は、特定の社員への特別扱いではありません。組織として役割を再分配するプロセスです。
管理職の役割は、感情の調整だけでなく、業務構造を整えることにあります。
5. 復帰対応は成熟度テスト
感染症流行や地域事情など、育児中の社員自身の業務に影響を与える外的リスクは増えています。
育児世代の人材は、多くの企業にとって中核的な戦力です。
育休からの復帰対応を「手間」と捉えるか、「組織改善の機会」と捉えるか。
この視点の違いが、数年後の定着率や採用競争力に影響します。
働き方の柔軟性は単なる優しさではなく、組織が長期的に人材を維持するための持続可能性の条件です。
まとめ|育休から復帰する社員を定着につなげるために
育休からの復帰は、一人の社員の問題ではありません。
組織の設計力が試される場面です。
外的要因は今後も起こります。
残業前提の構造も簡単には変わりません。
だからこそ、次の3点を改めて確認することが重要です。
・在宅可能業務の明確化と運用基準の整備
・業務量と納期を含めた構造の再設計
・フォロー業務の可視化と評価制度への反映
育休復帰を「配慮」で乗り切るのではなく、「構造」で支える。
それは特定の社員のための取り組みではなく、組織全体の持続可能性を高める経営判断です。
新年度という節目を、制度確認の場に終わらせず、業務設計を見直す機会にできるかどうか。
その積み重ねが、社員の定着と企業の競争力を左右します。
業務や制度の設計を見直したいなら

育児休業から復帰する従業員が安定的に勤務継続・定着するには、企業として業務のコントロールや制度の見直しが必要になってきます。
その過程で、外部の専門家から客観的な視点を取り入れることで、
経営と現場の双方が納得しやすい制度設計につながります。
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