2025.11.11

採用ビジネスが競う時代、“定着”はみんなで育てる ヒトベース代表×執行役員 対談

このたび、当メディア『定着の樹』の運営会社であるヒトベース株式会社は、2025年11月11日に創立10周年を迎えました。

採用支援や人事施策支援を行ってきた同社が、なぜ「定着」という視点にこだわってきたのか。

そして、そこから生まれた『定着の樹』というメディアには、どんな想いが込められているのか。

ヒトベース代表の渡辺徹と、『定着の樹』創設メンバーである執行役員の名取洋平が、10年の歩みを振り返りながら語ります。

1. 「就職する力」と「続ける力」は違う──現場で気づいた“定着”の原点

──まずは、渡辺さんが「人材定着」というテーマに関心を持ち始めたきっかけを教えてください。

渡辺:

きっかけは2011年ごろです。

2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災の影響が残る中、私は仙台市の紹介予定派遣事業に関わっていました。

面接に同席し、就職後のフォローもしていたのですが──1週間もしないうちに「紹介した人が合わない」と企業からクレームが来てしまった。

紹介した方を一度戻して研修をやり直す中で、「就職する力」と「仕事を続ける力」は全く違うのだと痛感しました。

その後も、従業員本人の“やる気”の問題ではなく、企業側にも「受け入れる技量」が足りていない現実を感じました。

2012年に経営者向けセミナーで「定着」という言葉を出したところ、鼻で笑われたこともあります。

けれど翌年あたりから、少しずつ“定着”という言葉が企業の意識に入り始めた感覚がありました。

採用の入口支援だけでは本質的な課題は解決しない──そう感じたのは、この経験があったからです。

2. “採用の入口”から“働き方のその先”へ──ヒトベースが定着に向かった理由

──2015年にヒトベースを立ち上げた当初から、“定着”を意識していたのでしょうか?

渡辺:

そうですね。
設立当初は講師業としてのスタートでした。

その頃、採用支援の現場でモチベーションやメンタルヘルス、組織開発など“人が続く”ための要素に関心を持つようになりました。

とはいえ、当時はまだ事例が少なく、理論とわずかな実践例を結びつけて話すしかありませんでした。

しかしその後、コロナ禍で企業からの相談が増えていくなかで、ようやくヒトベースとしての「定着の5要素(条件の見直し・仕事自体の見直し・社員個人へのアプローチ・管理職へのアプローチ・組織コミュニケーションの活性)」が形になっていきました。

名取:

私はヒトベース設立後、少し経ってから合流しました。

前職で地方創生プロジェクトのセミナーに参加した際、徹さんが講師として登壇されていたのが最初の接点です。

その後、東京本社が公共事業を集約する方針となり、所属していた東北チームが解散するタイミングで徹さんから声をかけていただきました。

採用の“入口”だけでなく、働き方の“その先”まで関われる環境だと感じたことが、合流を決めた理由です。

▼定着の5要素についての詳しい記事はこちら

3. 「定着の樹」誕生──“他社と競わず、みんなで育てる場”に

──『定着の樹』を立ち上げたきっかけを教えてください。

渡辺:

「定着を学べる場をつくろう」という話から始まりました。

当初は協会のような形で“学び”を体系化しようとしていましたが、まずは広く発信できるメディアとして形にすることにしました。

定着の重要性を知ってもらい、実践につなげるための“きっかけ”を作りたかったんです。

名取:

徹さんからその話を聞いたとき、私もすぐに賛同しました。

SNSのように、共感する人たちが集まる“コミュニティ”のような場にしたいと考えていました。

実際、立ち上げ当初は「とりあえず形にしよう!」と勢いでページを作ったくらい(笑)。

でも、「公開したからには続けなければ」という覚悟が生まれましたね。

『定着の樹』では、人材業界の同業者とも競うのではなく、支え合う関係を築ける場にしたかったんです。

渡辺:

その“競合せず共に育てていく感覚”がぴったりでした。だからこそ「樹」という名前に。

一本の木のように、関わる人が増えるほど枝葉が広がる──そんなイメージです。

4. “そうじゃない企業”を成功させたい──中小企業のための定着支援

──『定着の樹』での発信を通して、誰にどんな価値を提供したいですか

渡辺:

人材サービスという仕組みは、どうしても大企業のために設計されているものが多い。

でも、私たちは“そうじゃない企業”を──下剋上というわけではありませんが、成功させたいと思っています。

規模の小さい会社が成功事例をつくるきっかけを支援することが、私たちヒトベースの使命です。

名取:

私も同じです。

地方・中小の現場でこそ、定着に関する知識や実行力が求められています。

経営者や人事担当者自らがセミナーに参加し、学んだことを自社の施策に落とし込める人はほんの一部。

『定着の樹』は、そうではない人たちの“駆け込み寺”のような存在として、ヒントになる情報を届けていければと思っています。

5. 「定着をブームに」──競わず、社会を変えていく次の10年へ

──今後、どんな未来を描いていますか?

渡辺:

名取さんも言っていましたが、定着というテーマは採用ビジネスと違って、同業他社とも協力できるものだと思っています。

垣根を超えて“定着を考える”人が増えれば、それが社会の変化につながる。

「『定着』をブームにしたい」──それが次の10年に向けての挑戦です。

名取:

私は“優しい社会”を目指したいです。

誰かが犠牲になるのではなく、一人ひとりが自分の役割を感じながら「働いてよかった」と思える世界

定着は、その入口だと思っています。

6. 編集後記(編集部 はっしーより)

編集部
はっしー

「採用して終わり」ではなく、「働き続けてもらう」ための支援を。

その姿勢を貫いてきた2人の言葉からは、“定着”を軸に社会を変えていこうとする静かな情熱が伝わってきました。

わたしたち『定着の樹』は、“定着”という視点を社会に広げていくメディアとして、
これからも現場の声や実践の知を発信し続けていきます。

人と組織のつながりを見つめ直すきっかけを、一つひとつ丁寧に届けていきたいと思います。

定着の樹 代表のプロフィール


採って終わりにしない、自社の”定着”も考えていきたい方に

中小企業には今後、「採用スキル」だけでなく、従業員に長く働いてもらうための「定着施策を考えて実行していく力」も求められるでしょう。

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