2025.11.25

“OL”という言葉にムズムズする3つの理由──11月25日は「OLの日」

いつも定着の樹をご覧いただきありがとうございます。編集部のはっしーです!

本日、11月25日は「OLの日」なんだそうです。

 「OLの日」は、異業種間OLの交流サークル「OLネットワークシステム」が1994年に制定したもので、
女性週刊誌『女性自身』1963年11月25日号で、働く女性の総称を「OL=オフィス・レディー」とする記事が発表されたことにちなむとされています。

ただ、私個人としては、「令和の今も“OL”という言葉で記念日として世に公表していていいんだ…」と、どこか引っかかるような感じがします。

というのも、いつしか私の中で「OL」は“避けるべき表現”として認識されるようになっていたためです。

1. 子どもの頃、“OL”は当たり前の言葉だった

私が子どもの頃、親が見ていたテレビ番組では「OL」という言葉が普通に使われていました。

2000年代初期は『ショムニ』をはじめとした“OLドラマ”も人気で、職場で働く女性=OLというイメージが広く共有されていたように思います。

また、「看護婦」「婦警」といった性別で分けられた職業名も一般的で、おそらく当時の私も無意識に使っていたのでしょう。

余談ですが、客室乗務員を「スチュワーデス」と呼んでいた時代があることは最近まで知りませんでした。
先日、ドラマ『やまとなでしこ』を見て初めて知り、思わず時代の空気を感じたほどです(笑)。

2. 学びを通じて気づいた、“言葉の違和感”

そんな私でしたが、高校から大学にかけて「ジェンダー」や「男女の役割意識」について学ぶ機会が増えるにつれ、職業名に性別を付すことへの違和感を覚えるようになりました。

“女性だからこの仕事”“男性だからこの役割”といった境界線は、言葉の中にこそ残りやすい──その事実を知った瞬間でもあります。

同時に、何気なく使っていた言葉の背景に、自分の理解が届いていなかった部分があったのだと気づき、少し立ち止まって考えるきっかけにもなりました。

3. 社会に出て痛感した、「OL」が残り続ける現実

社会人になった今、別のお仕事先でWebサイトの校正・校閲に携わっていると、いまだに“OL”と記載された原稿に出会います。

「今の読み手によっては違和感につながる可能性があるため、『会社員』としたほうが良いのではないでしょうか?」と提案すると、

「法律で禁止されているわけではないし…」
「立ち上げ当初からこの表現を使ってきたから…」

といった理由で修正を行わないケースもあります。

各自治体が公開している「表現のガイドライン」でも、「OL → 会社員」への言い換えを推奨している例は少なくありません。

しかし、表現に対する感度は組織や世代によって依然として大きく異なるのだと実感します。

4. なぜ“OL”と呼ばれるとムズムズするのか

“OL”という言葉に違和感を覚える理由は、次の3点にまとめられます。

1)性別で役割を固定するニュアンスが残るから

ニッセイ基礎研究所の記事では、当時の“OL”像について次のように述べられています。

(前略)「寿退社」や「腰掛」という言葉があったように、結婚退職による短期雇用が想定されていた。(中略)短期雇用が想定されるということは、勤務先から、長期的な育成対象から外されることを意味する。(中略)退職したら育成コストが無駄になるため、簡単な業務だけを担当させておくことになる。(後略)

(出典:ニッセイ基礎研究所「元祖『OL』たちは令和で管理職になれるか」

この記事での主張が示すように、“OL”という呼称には
「女性社員の結婚退職を想定した短期雇用」→「長期育成の対象外」→「補助的業務に固定」
といった構造が歴史的に存在していたことがうかがえます。

そのため、現代にこの呼称を耳にすると、職種ではなく性別によって役割を決められるような印象が残り、どこかムズムズしてしまうのだと思います。

2)かつての“見えない負担”の構造を引きずっているから

1つ目の理由で触れたように、「OL」はかつて、

  • 結婚を前提に短期間働く
  • 長期育成の対象には含まれない
  • 組織内で“補助的なポジション”として扱われる

といった前提で設計されてきました。

本来、「OL」は職種ではありません
しかし、当時このポジションを主に若い女性が担っていたことで、

  • 事務職=女性が就くもの
  • 女性=サポート役に向いている

という認識が社会に広がっていきました。

そして、その“サポート役”とともに任されてきたのが、職務として明文化されにくいものの、職場を支えるために欠かせない業務です。たとえば──

  • 来客へのお茶出し
  • 会議の準備・片付け
  • 電話番
  • 社内イベントや贈り物の段取り
  • 細かな調整業務や雑務

こうした業務は、数値化して査定・評価することが難しく、担当者の負担が見えにくい一方で、文化や暗黙の期待として“女性が自然に担うもの”という雰囲気が残るケースもありました。

この流れを踏まえると、「OL」という言葉には、
“女性であること”と“補助的・ケア的な役割”をセットで担うことを前提としたポジション
という歴史的なイメージが重なっているように感じます。

もちろん、今は働き方も価値観も大きく変わっていますが、
こうしたイメージが言葉の中に残ることで、“OL”という呼称に触れたときに、どこか旧来の職場文化を思い出してしまう──そんな小さな違和感につながるのだと思います。

3)現代の働き方とズレているから

現在は、営業、企画、経理、広報、マーケティング、制作、エンジニア……と、女性の働くフィールドも専門性も大きく広がっています。

しかし、“OL”という言葉は、こうした多様な職能を性別だけでひとくくりにしてしまう呼称です。

個人の役割や専門性ではなく、“女性である”という属性そのもので職業を語ってしまう点に違和感があります。

そのため、多様化した現代の働き方とはズレが生じ、今“OL”と言われることがしっくりこないのかもしれません。

5. 言葉を見直すことは、“働きやすさ”につながる

「OLの日」にあえて“OLという言葉の終わり”を考えてみる。

そんな視点から、働きやすさとは何かを見つめ直してみるのも良い機会だと思います。

今求められているのは、性別ではなく役割と専門性で語られる働き方。

そして、“◯◯らしさ”に期待するのではなく、個々が力を発揮できる環境を整えることです。

かくいう私も、もう“OL”と呼ばれるより、
「働く一人のプロ」として見てもらえるほうがずっと心地よいのだと感じています。

▼関連記事はこちら


働きやすい職場づくりは、日々の“言葉”から変えられます。

今回のテーマにもあったように、何気ない呼び方や職場の前提には、働きやすさや役割の固定観念が影響していることがあります。

従業員一人ひとりが力を発揮し、安心して働き続けられる組織づくりには、“制度”だけでなく、コミュニケーションのとり方や文化のアップデートも欠かせません。

定着の樹では、社員が定着し、戦力化していくためのヒントを専門家の記事とともに定期配信中。

  • 各分野専門家による監修記事
  • 採用・定着の工夫 など、経営者や人事担当者に役立つ情報をお届け
  • 月1回のメールマガジンで最新記事やイベント情報もお知らせしています。

登録は30秒で完了&完全無料!
▼こちらから、今すぐご登録いただけます。