
新入社員が入社して、まもなく2ヶ月。
ようやく職場に慣れ始めた一方で、周囲には少しずつ“期待”と“不安”が混じる空気が漂い始める時期です。
「この子はちゃんと育つのか?」
「いつになったら任せられるようになるのか?」
新人さんを受け入れた現場からは、そんな声も聞こえてきます。
振り返れば、今年の新入社員の受け入れ態勢は、かつてと比べて非常に手厚いものでした。
待遇もサポートも、まるで“おもてなし”のよう。
新人育成を支援する立場でありながら、「ここまで変わったのか」と驚くことも少なくありませんでした。
しかしながら、育成のゴールは“迎え入れる”ことではなく、“戦力として育て、定着させる”こと。
そのためには、新入社員への接し方や育成に対する考え方そのものを見直す必要があるかもしれません。
「石の上にも三年」は、もう古い?

いわゆる「石の上にも三年」は、令和の時代には通用しない部分が増えてきました。
かつては、「転職=ランクダウン」と考えられていた時代もありました。
私自身、就職氷河期の末期を経験した世代として、“辞めずにしがみつくこと”が評価されていた時代を知っています。
しかし今は違います。
転職はスキルアップや条件改善のための合理的な選択肢として受け入れられ、
「長くいなければ一流になれない」という価値観は、むしろ敬遠されることもあるのです。
たとえば、美容師のような技術職でさえ、かつての「3年下積み」という方針から、数年で戦力に育てるスタイルへと大きく転換されています。
だからこそ、育成のスピードや習得プロセスそのものをアップデートしていく必要があります。
それでも「最初の3年」で土台は築かれる

しがみつく必要はないにせよ、「最初の3年」で社会人としての基礎がつくられるという事実は、今でも変わりません。
新入社員や新人が、社会人としての価値観を育むのは、まさに最初の3年間。
どんな人と出会い、どんな価値観や働き方を見て、どんな言葉をかけられるか──そのすべてが、本人の意思決定スタイルやキャリア観に影響を与えていきます。
意思決定をする際、私たちは意識せずとも、以下の2つのタイプに分かれています。
- 選ぶキャリア:目指すものが明確にあり、多少のハードルがあっても乗り越える覚悟を持つ
- 避けるキャリア:困難や負荷の回避を優先し、魅力よりもリスクを見てしまう
どちらが良いというわけではありませんが、こうした判断軸は、周囲から受ける影響を通して、新人のうちから少しずつ定まっていくものです。
成長のカギは「誰と出会うか」

新入社員が最初に接する“先輩社会人”の影響は、非常に大きいものです。
その人が、その若手の「社会人としての基準」をつくるからです。
たとえば──
- この仕事には、どんな意味があるのか?
- 社会人とは、どんなふうに働くものなのか?
- 仕事のつらさとやりがいは、どう両立していくものなのか?
こうした“当たり前の感覚”を、現場の先輩がどう伝えるかによって、その後の成長スピードやキャリア意識は大きく変わってきます。
AIの発展がめざましいとはいえ、人間が自動的に“賢く”なっているわけではありません。
人が育つには、やはり一定の時間と、他者との関わりが必要なのです。
また、現代は「多様性の時代」と言われていますが、同じ情報ばかりに触れていると、偏ってしまい、むしろ視野が狭まる危険もあります。
だからこそ、“しがみつかなくてもいい”という自由と、“じっくり腰を据える価値”の両方を、若手に伝えていくことが大切です。
そして、育成に関わる私たち自身もまた、そのプロセスの中で仕事の意義を再確認し、共に成長していく──そんな関係性が、これからの人材育成には求められるのかもしれません。
まとめ:新入社員育成に今、求められる視点
時代の変化とともに、「育成の当たり前」も見直しが必要になっています。
この記事では、以下の点をお伝えしました。
- 「石の上にも三年」は、現代では通用しにくい場面も増えている
- とはいえ、最初の3年で価値観やキャリア観の“土台”は形成される
- 新入社員にとって「誰と出会うか」「何を学ぶか」が育成のカギ
- 先輩社員の言動が、新人の“社会人としての基準”を形づくる
- 育成に関わる側も、若手との関わりの中でともに成長していくことが、これからの人材育成に求められる
新入社員を受け入れる形は変わっても、「最初の3年」が与える影響は、今もなお大きな意味を持ち続けています。
新人育成のあり方を、時代に合わせてアップデートしていきましょう。
人が育つ職場づくりを、いっしょに考えませんか?

「“石の上にも三年”はもう通用しない」
けれど、「育成に時間がかかる」のもまた事実。
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