2025.06.10

新入社員の“不安”を軽視しないで。短期離職を防ぐために企業ができること

4月に入社した新入社員たちが、少しずつ職場に慣れてきたころ。

現場では「そろそろ本格的に仕事を任せていこう」という動きも始まっているかもしれません。

しかし同時に、企業側が気づかないところで、“辞めたいかもしれない”という気持ちが芽生えるタイミングでもあります。

「え、順調に見えたけど?」
「まさか、もう辞めたいなんて…?」

そう驚かれるかもしれませんが、背景には“見えない不安”があることが少なくありません。

今回は、企業が気づきにくい新入社員の不安の正体と、短期離職を防ぐための実践的なヒントをご紹介します。

1.  実際に起きた短期離職の事例

事例1:「先が見えない不安」で辞めたAさん

A社では、新入社員が現場配属されると先輩社員がOJTで指導を行っています。
ある新入社員が、仕事の進め方について細かな質問をしていたところ、先輩社員は「慣れればわかるよ」と答えました。

しかしこの返答は、「仕事に正解がないから、自分で考えよう」という意味でも、「教えるほどのことでもないよ」という軽い意図でもなく、むしろ「安心して取り組んでほしい」という思いからでした。

ところが新入社員は、「先が見えなくて不安だ」「聞いても答えてくれないのは、放っておかれている証拠では?」と受け取り、数か月後には退職してしまいました。

事例2:「このままでいいのか」と孤立したBさん

B社では、業務に慣れてもらうために、あえて基礎的な作業を時間をかけて教えています。
ある新入社員も、じっくりと仕事を覚えていきましたが、やがてこう感じるようになります。

「同じことばかりやっていて、成長している感じがしない」
「もっと自分の力を活かしたいのに…」

そのうち、周囲から「やる気がない」「挑戦しない人」と見られるようになり、気づけば職場内で孤立。
やがて本人も「このまま続けても意味がないかも」と考え、退職してしまいました。

2. 新入社員の“不安”とは何か?

かつてのように「とにかく頑張れ」だけでは通用しない時代になりました。

今の新入社員は、将来像や成長イメージが描けるかどうかを重視しています。

「この会社で何を経験できるのか?」
「どんな力をつけていけるのか?」
「ここにいる意味があるのか?」

これらが見えないと不安が膨らみ、「今のうちに辞めてやり直した方がいいかも」と考えてしまいます。

一方、企業側は「特に問題もなく業務を教えていた」と思っていても、それはあくまで“教える側の視点”

受け手である新入社員の心には、「不安」「孤独」「将来へのモヤモヤ」が残ったままになっていることが多いのです。

3. 見通しを伝えることが“安心”につながる

「キャリアパスを明確に示せないから無理だ」と感じるかもしれません。でも必要なのは、完璧な将来設計図ではなく、“少し先の見通し”です。

たとえば、

  • 「この業務を3か月担当したら、次は〇〇にも挑戦してほしい」
  • 「1年後には後輩の育成にも関わってほしいと思ってる」
  • 「今後この部署での経験が、将来の〇〇につながるよ」

といったざっくりした未来予告でも、新入社員にとっては大きな安心材料になります。

仕事の背景や目的、自分に期待されていること、評価のポイントなど、「なぜ今この仕事をしているのか」を理解できるだけで、不安はグッと軽減します。

4. フォローアップ面談で不安の芽を摘む

“見通し”を伝えることと並行して、日常的なフォローの場を設けることも大切です。特に入社して間もない時期は、精神的な負荷も大きいため、細やかなコミュニケーションが欠かせません。

「何か困っていることある?」
「仕事で引っかかってることない?」
「生活のことでも気になることがあれば教えて」

たった10分でも、新入社員の“心の声”を拾える場があると、不安の芽を早い段階で摘むことができます。

  • 定期的な1on1(週1回10~15分でもOK)
  • 上司だけでなく、年齢の近い先輩との対話も有効
  • 雑談も交えたリラックスした雰囲気づくりを


「ちゃんと見てくれている」「話を聞いてくれる人がいる」と感じられることで、職場への安心感が増し、短期離職の防止にもつながるのです。

さいごに:不安は“想像力”で和らげられる

新入社員の短期離職は、能力や性格の問題ではなく、多くの場合“不安が放置された結果”です。

  • 何をやっているのか、なぜやるのかが分からない
  • 自分がどうなっていくのか、イメージが持てない
  • 話せる人がいない、相談できる場がない

こうした“見えない不安”を受け止めるのは、企業や職場の「想像力と対話力」にかかっています。

少し先の未来を伝え、寄り添う姿勢を持つだけで、「ここで頑張ってみよう」と思ってくれる新入社員は、きっと増えていくはずです。


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